江戸時代の百姓は案外豊かだったのではないか?

★『織田が捏ね(こね)、豊臣が突く(つく)天下餅、ただ家康と安々食らう家康』

こんな戯れ話がある。でも、家康だって苦労も努力をしているが、ここでは省く。

織田信長が『兵・農分離』の元祖で、秀吉の刀狩りで、ほぼ固まって、家康が大阪夏の陣で豊臣を滅ぼし、天下を統一し、『士・農・工・商』の身分制度を確立した。 

★百姓は身分こそ、支配者の武士に続く身分を得たが、家康の政策は百姓を、百性を各・大名の主戦力・足軽(歩兵で、鉄砲部隊の主力)の、供給元が農家の次男、三男が多かったにで、力を削ぐ為に、『生かさぬよう、殺さぬよう!』、収穫の半分は年貢の取り立で、百姓の手元には、半分しか残らなかった。 

これでは満腹にならないので水を飲んで凌いだ。 これが『水飲み百姓』の語源だと聞いている。 さらに『太閤検地』で『隠し田』は全て白日の下に晒され、収穫の全てが把握され、結果年貢の取り立て厳しかったと聞く。

★こんな話を聞くと、江戸時代は百姓にとっては暗黒時代だった想像するが、奈良県・御所市の郷土史家の論文によると、『五公五民』の年貢も、庄屋の陳情に応じた査定の武士により、隠し田の三割は「お目こぼし」,とななり、実質の年貢は収穫の七割であり『五公五民』の年貢の納め高は、実質三割五分で、百姓の取り分の方が多かったのである。

これで納得した。 

★春は豊作を祈る春祭り、秋は収穫の恵みに感謝する秋祭りが行われ、神の供えたお供え物の御下がりは、村民の頂く事となり『飲めや、歌絵や』と、大いに楽しんでいる。 

そして、農閑期の御伊勢参りは、伊勢講(積立金)を組んで、集団で一月にも及び、伊勢神宮の門前町には大きな歓楽街もあって、伊勢講の農民は結構楽しんでいたようである。

さらに、近在にあった遊郭は、千人近い遊女を擁し、江戸の吉原、京都の島原と並んだ三大花街だと聞く。

これらを考えてば各種税金に苦しむ、現代の我々より優雅な暮らしでは無かったのか、想像するが、あながち間違いでもなかったような気がする。

★領主や代官が無理な課税や役務の調達をすれば、ムシロ旗を掲げ、一揆を起こし強訴をする。それが幕府に聞こえると、

『領内の治世宜しからず!』と、領地召し上げや、国替えをされる事を恐れた領主達が穏便に事を済ませようと妥協したので、財政が苦しかったのは寧ろ支配者側の方だった。

★この話の出所の御所市の名門の出の、中井陽一氏は、三井造船の技師で退職後、自家の土蔵に先祖打代残された五百冊に及ぶ古文書を解読し、博士号を得た。

その博士論文の一節から借用したものであります。

原文は難しく、筆者の能力では読み辛く、中井先生に解説して頂いたものであり、誌上をお礼と感謝の意をさせて頂きます。

★現代の農水省の方針は、この『御こぼし』しで、農家を優遇して、農業の近代化を妨げているのだ。

チャイナやアメリカの農地は、数百ヘクタールの広大な農地に、日本では見たこともない大型機械での大量生産だ。

我が国の農業は個人での耕作できる、単位の2ヘクタールの農家などは滅多にない。

近畿の穀倉地帯と言われる、滋賀県が1.-5ヘクタールが精々である。

★琵琶湖の次の大きな湖の『八郎潟』を埋め立て、日本の農業の大型化を目指しても、一戸当たりが15へクタール。

しかし、この大型農地が完成した時には、米も生産過剰で、減反奨励金が出ている。

村の中の自宅、農地を売って、入植した農家にも減反名令が下った。

「馬鹿な!」と、減反指令に背いて植え付けた農家に、『農地の返却』が命じられ、帰る家を亡くし、減反司令に従って、泣く泣く耕運機で青田を踏みつぶしたのだ。

農水省は、これに補助金を払ったとういう。

そして、都市近郊の里山近くの棚田(一区画数十坪)も、元々の取り高は広域農家の半分であるのに一律の減反である。

★都市近郊の農家と称する、家は近所の会社のサラリーマンで、農地は家庭菜園の姉サン程度の範囲でで、農家とは呼べない代物だ。

我々も棚田の風景は日本人の心の故郷、原風景で残したい、というからには、最早、価格競争力を失い,不要となった農地、それを維持する費用の負担を如何にするかを、真剣に考える時が来ている。

悪戯に輸入品と価格競争をさせるだけでなく、狭い国土は地価が高い。従って価格は高くなる。

遺伝子操作の小麦は食べたくない。 手間暇かけて、品種改良した国産米が、良いのなら、その原価を誰が負担する。 

★こんな難しい事を、農水省の役人だけに、日本の将来の食糧計画を任せて、良いものだろうか?

TTPが発効すれば、日本の農業は壊滅する、と非難をするが、個人経営で、小規模な日本の農家の担う人々は平均が65歳と聞く。 TTPに入ろうと、入るまいが、後、数年で農業従事者はいなくなり、田畑は休耕田で荒地になってしまう。

TTPが発効しようと、しまいが、日本の農業は重大な転換期に来ている。

★一億の日本人総べてが、持てる英知を結集して考えようではないか?!

   了)   豊永高明 拝

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